Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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ジュゼッペ・マリア・クレスピ Giuseppe Maria Crespi
1665-1747 | イタリア | 18世紀ボローニャ




18世紀に活躍したボローニャの画家。繊細な光彩表現と明確な明暗対比によって、対象の核心と本質を捉えた作品を数多く手がける。独特の筆触によって描写される作品は後に「後期ボローニャ派における唯一の天才」と称された。画業の初期にはフレスコ画・祭壇画などの宗教画や神話画などを制作したが、フィレンツェでの滞在をきっかけに、庶民性を強く感じさせる風俗画や静物画なども手がけるようになった。1665年、ボローニャで生を受け、青年期に同時代の画家C・チニャーニに師事するものの、17世紀ボローニャ派の巨匠アンニーバレ・カラッチを始めとしたカラッチ一族の古典主義的様式や、グエルチーノの強い運動性を兼ね備えた明暗対比表現に強く影響を受け初期の様式を形成する。17世紀末期からヴェネツィアやパルマ、ウルビーノを巡り、1709年にフェルディナンド大公から招かれフィレンツェへ滞在。この時、マニャスコやフランドル出身の画家らに出会い画家としての視野を広げる。その後、神秘性も感じさせる独自の風俗画や静物画を手がけ、『七秘蹟』など数多くの代表作を残すものの、1747年にボローニャで死去。なおクレスピは指導者としても大変優れており、クレスピの弟子にはジョヴァンニ・バティスタ・ピアツェッタピエトロ・ロンギなど18世紀イタリア絵画界の重要な画家がいる。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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皿洗い女

 (La sguattera) 1710-15年頃
寸法不明 | 油彩・画布 | ウフェツィ美術館(フィレンツェ)

18世紀に活躍したイタリアの画家ジュゼッペ・マリア・クレスピを代表する風俗画作品のひとつ『皿洗い女』。本作は簡素な台所で皿洗い作業をおこなう婦人(又は使用人)を画題に、平民の生活感に溢れる情景を描いた風俗画作品である。風俗画は17世紀オランダ絵画黄金期に代表されるよう、フランドル地方からイタリアやフランスを始めとした欧州諸国へと広がった絵画展開であるが、本作にもその影響が顕著に示されている。画面中央奥へと描かれる皿洗いをおこなう女性は、柔らかく繊細な光源処理と、それと対比させる深い陰影表現によって、その作業や仕草があたかも崇高なものであるかのような錯覚を覚えるほどドラマチックで詩情性豊かに描写されている。また女の後姿を中心に描き、顔を見せない(隠す)ことによって≪皿洗い≫という生活に密着した作業の明確化と画題に対する観る者の視線の誘導に成功している。さらに細部に注目しても丁寧な描写による緻密な写実的描写にもフランドル絵画の影響を感じることができる(※本作を手がける前年の1709年からクレスピはフィレンツェへ滞在し、この時、フランドル出身の画家らと接近していたことが知られている)ほか、静謐な場面描写による(庶民性の)気高い精神性の取り組みにも同絵画への傾倒を見出すことができる。

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【全体図】
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蚤を取る女

 (Donna che si spulcia) 1730年頃
55×41cm | 油彩・画布 | サン・マッテオ美術館(ピサ)

18世紀ボローニャ派の巨匠ジュゼッペ・マリア・クレスピの典型的な作品のひとつ『蚤を取る女』。おそらくはロンドンのオペラ座の支配人オーウェン・マクスウィニー(※彼はカナレットの最初の画商としても知られている)の依頼によって制作された本作は、簡素な寝台(ベッド)の上で己の身体や衣服についた蚤を掻き毟りながら取る姿を描いた風俗画である。従順そうな一匹の犬と共に簡素な木製の寝台に腰掛ける女は、衣服の中へ手を伸ばしながら纏わりつく蚤を必死に取っており、その姿は、寝台の傍らへだらしなく脱ぎ捨てられた室内の履物と共にある種の卑俗性すら感じさせる。また画面奥には幼子を抱く老人が外へと出かけるのであろう小瓶を手にする老婆に何か声をかける姿が描かれている。本作で最も注目すべき点は、直接的で人間味の溢れる風俗描写にある。繊細に表現された明瞭な光彩によって簡素な室内と主対象(本作では蚤を取る女)を見事に浮かび上がらせており、観る者は否応なく本作の世界観に惹き込まれる。さらに壁に掛けられる大蒜(ニンニク)の束や籠、飾られる皿など細部の静物描写が本作の生活観に溢れた風俗性をより強めている。このような日常や実生活での体験をそのまま写したかのような風俗描写はフランドルの風俗画作品の影響であるが、クレスピの古典主義的様式と融合することによって、そこに神秘的な魅力が発生している。なお本作のような≪蚤を取る女≫を画題としたクレスピの作品は複数知られており、中でもフィレンツェのウフィツィ美術館が所蔵する女性歌手に着想を得て制作された連作の中の一点と推測される『』は本作と共に画家を代表する作品として広く認められている。

関連:ウフィツィ美術館所蔵 『蚤』

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