Introduction of an artist(アーティスト紹介)
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ジョヴァンニ・バティスタ・ピアツェッタ Giovanni Battista Piazzetta
1683-1754 | イタリア | 18世紀ヴェネツィア派




18世紀イタリアを代表するヴェネツィア派の画家。深く褐色的な明暗対比による暗部に特徴を示す独特の描写手法や自由で大胆かつ荒々しい筆触で対象を劇的かつ奔放に表現。伝統から逸脱しつつあった画家の新たな表現は当時のヴェネツィア美術界に受け入れられただけでなく、ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロを始め、多くの画家たちに影響を与えた。宗教画が有名であるが、風俗画、肖像画、挿絵、木版画でも優れた作品を残している。1683年、ヴェネツィアの木彫家であった父とその妻との間に生を受け、幼い頃から父より堅固性に富んだ伝統的な形態表現を学んだ後、ボローニャへと旅立つ。同地では巨匠ジュゼッペ・マリア・クレスピに師事し、同画家から繊細な光彩表現と明確な明暗対比を習得。また17世紀ボローニャ派の偉大なる画家グエルチーノの劇的な運動性や明暗表現にも大きな影響を受ける。その後、ヴェネツィアへと帰郷し同地で数多くの祭壇画や天井画を手がけ大きな成功を収めるものの、個人の収集家のために制作した世俗性に溢れる風俗画や、挿絵・木版画の完成度の高さも特に重要視される。1750年にはヴェネツィアの美術アカデミー院長の任に就くなど同アカデミーの創設にも重要な役割を果した。1754年故郷ヴェネツィアで死去。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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刑場に曳かれる聖ヤコブ(聖ヤコブの殉教)


(Sant Jacopo condotto al martirio) 1722年
165×138cm | 油彩・画布 | サン・エスタ聖堂(ヴェネツィア)

18世紀ヴェネツィア派の画家ジョヴァンニ・バティスタ・ピアツェッタ初期の代表作『刑場に曳かれる聖ヤコブ』。ピアツェッタのほか、セバスティアーノ・リッチジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロなど当時の名だたる画家たちが参加した、ヴェネツィアのサン・エスタ聖堂を飾る≪黄金伝説(レゲンダ・アウレア)≫に典拠を得る12聖人連作装飾画のひとつとして制作された本作は、キリスト12使徒の中のひとりで、実弟聖ヨハネ(※ヨハネもキリスト12使徒のひとり)と共に気性の荒さから雷の子(ボアネルゲス)と呼ばれた≪聖ヤコブ(大ヤコブ)≫が、当時のエルサレム王ヘロデ・アグリッパ1世の命により斬首刑が言い渡され処刑場へ連れて行かれる場面を描いた作品である。画面中央から右側には縄で強制的に曳かれながら書物と剣を持ち(※剣は大ヤコブのアトリビュート)、天を仰ぎ見るかのように斜め上へ視線を向ける聖ヤコブが、画面左側には聖ヤコブを処刑場へと連行する筋骨隆々とした処刑人が配されている。聖ヤコブが身に着ける簡素な外套や肌着は連行によって開けており、縄が胸の皮膚へと食い込んでいる。本作が制作された頃のピアツェッタは闇派(テネブロージ)の影響下にあり、本作でも強烈な明暗対比や激しい運動性、劇的な感情性を見出すことのできる描写手法など前時代(バロック様式)に通じるその特徴が良く示されている。

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聖フィリッポ・ネリに顕現した聖母マリア


(Vergine appare a san Filippo Neri)
1725-26年 | 367×200cm | 油彩・画布
サンタ・マリア・デラ・コンソラツィオーネ聖堂(ヴェネツィア)

18世紀ヴェネツィア派の大画家ジョヴァンニ・バティスタ・ピアツェッタの代表作『聖フィリッポ・ネリに顕現した聖母マリア』。ヴェネツィアのサンタ・マリア・デラ・コンソラツィオーネ聖堂(通称デラ・ファーヴァ聖堂)の祭壇画として制作された本作は、フィレンツェの良家出身の聖人で大トリニティ病院や数多くの祈祷所、教会を建てるほか、オラトリオ会(音楽史におけるオラトリオの源泉のひとつ)の設立者としても知られる≪聖フィリッポ・ネリ≫の前に聖母マリアが顕現したという奇跡的体験を主題に描かれる作品で、18世紀イタリア最大の巨匠ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロにも多大な影響を与えた。画面左上には幼子イエスを抱き多くの天使たちを伴った聖母マリアが威厳に満ちた姿で描き込まれている。その対角線上となる画面右下には聖母マリアの顕現に、両手を胸の少し前で合わせながら感動と崇拝の表情を浮かべつつ聖母を見上げる聖フィリッポ・ネリが配されている。また聖母マリアの右側には(聖母が身に着ける)青衣に身体を包む天使が、聖母の下(聖フィリッポ・ネリの左側)には背を向けた少年風の天使が配されており、この両者も対角的な関係性を示している。本作で最も注目すべき点は昇華的な人物の配置によるダイナミズムに溢れた場面展開と、明暗対比の大きな光源処理による緊迫感に富んだ感情表現にある。特に聖母マリアの青衣に身体を包む天使と、静かに聖フィリッポ・ネリへ視線を向ける聖母マリアの連続的な位置関係は、聖母の聖性や偉大性も同時に表現するという伝統的な絵画表現から逸脱した自由奔放な対象の扱い方であり、今も観る者の内面へ深く入り込んでくる。また画面最下部に描き込まれる赤い帽子(司祭帽)や頭蓋骨など静物(アトリビュート)の扱いも非常に優れている。


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聖フランチェスコの法悦

 (Estasi di san Francesco) 1729年
寸法不明 | 油彩・画布 | キエリカーティ市立絵画館

18世紀イタリアで活躍した大画家ジョヴァンニ・バティスタ・ピアツェッタ初期の類稀な傑作『聖フランチェスコの法悦』。ヴィチェンツァのサンタ・マリア・ダラチェーリ聖堂の祭壇画として制作された本作は、清貧・純潔・服従を信仰の旨とすることでも知られる名高きフランシスコ修道会の創始者アッシジの聖フランチェスコが晩年期にアルヴェルナ山へと隠棲生活をおくる中、有翼の人間(天使)が現れ、その奇跡的歓喜に同氏が法悦(脱魂)状態になる場面≪聖フランチェスコの法悦≫を主題に描かれた作品で、本主題は別の説では6翼の熾天使(セラフィム)を通じて、主イエスと同位置に聖痕を受けたとされる逸話≪聖痕を受ける聖フランチェスコ(聖痕拝受)≫とも解釈されている。画面中央に配される法悦の聖フランチェスコは深い陰影に包まれ心身共に極限的衰弱状態にあるものの、その身の全てを天使に預ける脱力的姿態や穏やかな様子の表情には、フランシスコ修道会の強い思想的感動と聖性を見出すことができる。聖フランチェスコを抱く天使は神の威光を纏ったかのように画面の中で最も明瞭な光に包まれており、聖フランチェスコとの明暗対比は観る者を強く惹きつける。さらに画面上部には子供の姿をした2天使が、画面下部にはサンタ・マリア・ダラチェーリ聖堂に所縁深い聖レオーオが配されている。本作で最も注目すべき点は清貧な場面設定であるにも関わらず、感動的に仕上げられたピアツェッタ独特の光彩表現にある。この頃のピアツェッタは闇派(テネブロージ)と呼ばれる深い陰影と強い明暗対比などバロック的表現が特徴的な描写手法に傾倒しており、対角線を意識した登場人物や構成要素の配置、神秘性漂う雰囲気の表現などの効果も手伝い、本作は画家の闇派的作品の中でも最高峰の出来栄えを示している。なお本作は現在、ヴィチェンツァのパラッツォ・キエリカーティ市立絵画館に所蔵されている。

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聖母被昇天

 (Assunzione della Vergine) 1735年頃
517×245cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

18世紀前半を代表する偉大なる画家ジョヴァンニ・バティスタ・ピアツェッタ最盛期の傑作『聖母被昇天』。バヴァリア大公(バイエルン公)であり、ケルン選帝侯やゲルマン教団長(ドイツ騎士団長)も兼ねていたクレメント・アウグストゥスの依頼によりフランクフルト近郊ザッハゼンハウゼンの教会の祭壇画として制作された本作は、聖母マリアの死から3日後、魂が身体に戻され、天使たちに取り囲まれながら魂と肉体が天上へと昇天してゆく場面≪聖母被昇天≫を主題に制作された作品である(※一部の研究者からは聖母被昇天までの3日間について、聖母は死んだのではなく、眠っていたとされる説も唱えられている)。当時のドイツ圏はルソーの宗教改革によってプロテスタント勢が大きな力を有しており、本作にもその意図が色濃く反映されている。画面下部には空になった聖母の墓に両手を広げながら驚愕する弟子や昇天する聖母マリアを見上げる弟子たちが劇的な仕草で配されている。画面上部には大天使ミカエルとガブリエルに護衛されながら聖母マリアの肉体と魂が、輝かしい光に包まれ昇天してゆく情景が躍動感溢れる姿で描かれている。この頃のピアツェッタは闇派(テネブロージ)と呼ばれる深い陰影を用いた劇的な表現から、軽やかな光と色彩に満ちた大気感に溢れる新たな表現へと様式的変化を示しており、本作はその代表的な初期の作例としても特に重要視されている。この優美的で神秘性も感じさせる表現様式の変化に関してはジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロとの接触も大きな要因のひとつに挙げられる。

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ドミニコ会の三聖人

 (Santi domenicani)
1737-38年 | 345×172cm | 油彩・画布
サンタ・マリア・デル・ロザリオ聖堂(ヴェネツィア)

18世紀イタリアの巨匠ジョヴァンニ・バティスタ・ピアツェッタ最盛期の傑作『ドミニコ会の三聖人(聖ウィンケンティウス・フェレリウス、聖ヒュアキントゥス、聖ルドヴィクス・ベルトランドゥス)』。ドメニコ修道会からの依頼で、ヴェネツィアのサンタ・マリア・デル・ロザリオ聖堂(ジェズアーティ聖堂)の祭壇画として制作された本作は、同会に所縁の深い3人の聖人を主題に描いた作品である。画面中央から下部へは、フランスやスペインなどで布教活動をおこなったバレンシア出身の宣教師聖ウィンケンティウス・フェレリウスを始め、聖ヒュアキントゥス、聖ルドヴィクス・ベルトランドゥスと、清貧・清廉潔白を重んじるドメニコ会の修道服を身に着けた聖人らが配され、画面上部へは身を捩じらせながら中空を舞う天使を描き込んでいる。3人の聖人たちは突如現れた父なる神の使いの姿に、驚き軽い戸惑いの表情や姿態を示しつつも、己を信仰を表すかのように真摯な眼差しを向けている。本作で最も注目すべき点は、大気感に溢れた空気的な光の表現と明るさが増した画面構成にある。数年前に手がけた『聖母被昇天』でも示される、ピアツェッタの闇派(テネブロージ)を脱却した軽快で明度の高い色彩やエネルギッシュで大胆な構造的人物描写、自由闊達な筆触はバロック的表現とロココ的表現におけるひとつの融合的昇華を見出すことができ、それは今も観る者を強く惹きつける。さらに本作においては水蒸気のように上昇する白煙の軽やかな薄塗り的表現や登場人物を包み込む湿潤性、色数こそ少ないものの3聖人の色分けされた修道服などに見られる多様的な色彩の変化なども特筆に値するものである。

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